
ドーーーン
本当にそんな音だった。
だが、一瞬で悟った。
「これはぶつかったな」と。
すぐさま車を降りると、後ろに軽自動車が1台。
今回の事故の状況や、どちらに非があるか…今回お話ししたいのはそこではない。
相手は、かなりご高齢の紳士的な方とだけお伝えしておく。
動揺しながらも、相手方に怪我はないか大丈夫かどうかを確認して、すぐ警察を呼んだ。
警察を待っている間、相手とどんなことを話したらよいかわからなかった。
大きな怪我がなさそうなことだけ、ちょっと安心した。
警察が到着後、すぐに現場の整理と事情徴収が始まった。
簡単に書くと、こんな感じである。
①お互い怪我はないか
②事故がどういう状況で起こったのか
③物損事故として扱うか、人身事故として扱うか
④免許証・車検証・自賠責保険の確認
⑤連絡先、職場の確認
⑥お互いの連絡先を確認するように指示
相手方が、レッカー車を呼ぶのに少し時間がかかりそうだったので、動揺しながらも警察の方にお話しを聞いてみた。
警察の方から教えてもらったことは次のこと。
①どちらにどのくらいの責任があるかは私達には言えない。
②人命が最優先なので、怪我人がいる場合はすぐに救急車を呼ぶこと。
③物損事故にするか、人身事故にするかはお互いよく話して決めること
(明らかな怪我がある場合は、話し合いではなく人身事故として扱う)
④個人情報保護の観点から、相手方の連絡先は言えないのでお互いで交換すること
⑤ドライブレコーダーはあるに越したことはないが、当て逃げとかでなければ必ずということはない
気が動転していたので、少し違う部分があるかもしれないが、おおまかにはこんな感じである。
迷ったのが
物損にするか人身にするか
「え、それって事故した本人同士で決めるん?」
が正直な気持ちだった。
結論から言うと、「物損事故」として処理してもらうことにした。
お互い病院に行って診断書をもらう意思がなかったこと、人身事故になれば民事責任・行政責任・刑事責任を問われるということ。
「人身事故」としてもらった方がよいという意見もあるだろう。
ネットをみても、そのような記事がたくさん見受けられる。
事故処理が終わると、さっと警察の方は帰られた。
意外と警察って早く帰るのね…民事不介入ってやつか。
保険会社に連絡をして、連絡先を交換して当事者同士も帰った。
自分は事故をしないと思い込んでいた
私は運転を始めて、20年くらいになる。
大きな事故のニュースを見ても、どこか他人事だった。
心のどこかで
「私は大丈夫」
と思っていたのかもしれない。
交通事故は起こり得る。
事故が起こらないように注意することは大切だが、事故を起こさないと安心していると、起こったときに動揺してしまう。
今回の事故は、不幸中の幸いだが
・お互い同乗者がいなかったこと
・大きな怪我をしなかったこと
・相手が人格者であったこと
これは本当に運がよかったとしか言いようがない。
免許を持つことの責任
遠まわしに言っても伝わらないと思うので、本音で書く。
相手はご高齢であり、右足麻痺、片目が固定斜視(私が視能訓練士だから一目でわかる)になっていて、脳梗塞を起こした病歴があるのじゃないかと推測された。
状況的には、私の方に非が大きくなる可能性が高いと保険会社からは言われた。
さて、私が言いたいのは自分の負担を減らしたいでも、相手を責めたいでもない。
「車の免許を持つということの責任」
これである。
眼科には、多くの方が「免許を更新するため」に、受診して下さる。
我々は、できる限り患者さんの視力を免許更新ができるように努力する。
本当にそれでいいのだろうか?
患者さんにとっては、生活するために免許の更新は必要なことだし、出来る限り沿いたいと思う。
だが、適性が衰えている方が運転する車で、事故に合う人のことを真剣には考えていなかった。
どこか他人事のように考えていた。
免許を更新できないと伝えると、憤慨される高齢者の方がたくさんいる。
「そんなことを言う眼科なんか、2度と来るか」
なんて言われたことも、1度や2度ではない。
うちの院長は、バッサリと
「運転をやめて下さい」
と言い、私はどこか冷たく感じることさえあった。
強く言うことで、患者さんが将来の事故を未然に防ぐことができたら
それはある種の優しさなんじゃないかと思う。
免許の更新の問題はこれからも続くだろう。
「高齢者が運転をしないで欲しい」と言っているのではない。
「運転の適性が難しいと判断した場合には、返納することを勧めるのも大切なこと」
余談だが、家庭に経済的負担をかけたくないので私が全額自腹で負担することにした。
支払いドンと来い、支払い額が大きければ大きいほど、いい勉強・いい体験ができたと思いたい。
お互い、大きな怪我がなくて本当によかった。

心配して下さった皆さん、アドバイスを下さった皆さん、本当にありがとうございました。